今、世界中で水不足が深刻な社会問題となっています。この記事では、水不足が起きている原因から人々へ与える影響、個人でもできる対策について解説します。水が豊かな日本では気が付きにくいかもしれませんが、世界の現状を理解して、できることから取り組んでみましょう。
●世界中で水不足が起きている3つの原因
世界中で水不足が起きている原因には、以下の3つが挙げられます。
・世界人口が増えている
・地球温暖化が進行している
・水の使用量が増えている
人口増加や地球温暖化、水需要の拡大など、水不足が発生する要因にはさまざまなことが挙げられます。ここではそれぞれに分けて解説します。
原因1.世界人口が増えている
「世界人口白書2021」を参考にすると、2021年の世界人口は78億7500万人です。前年と比較してみると8000万人増加しています。人が生活するために必要とされている水の量は「1日あたり100L」といわれており、毎日7875億L以上が使われています。
今後も世界人口は増加するとされ、2050年には97億人に到達すると予測されているようです。つまり、約30年後には2000億リットル以上の水が上乗せされて必要になるといえるでしょう。
参考:世界人口白書2021
https://tokyo.unfpa.org/ja/SWOP2021#:~:text=%E3%83%BB%202021%E5%B9%B4%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BA%BA%E5%8F%A3,%E5%B9%B3%E5%9D%87%E3%81%A70.2%25%E3%81%9A%E3%81%A4%E6%B8%9B%E5%B0%91%E3%80%82
原因2.地球温暖化が進行している
温室効果ガスの影響により、世界中で気候変動が発生しています。これは水不足にも影響を与えているとされ、洪水や干ばつなどの原因といわれています。
異常気象が続くと、使える水の量にも変化をもたらします。一例を挙げると、地下水源の枯渇や湖の水量減少などが世界各地で発生しています。
また、温暖化が進み、自然環境の破壊が続くと平均気温が上昇する負のループから抜け出せなくなってしまうでしょう。
原因3.水の使用量が増えている
1950〜1995年にかけて、世界人口は約2.2倍に増加しました。それに加えて世界の水の使用量を見てみると、約2.6倍になっているといわれています。
上記を比べてわかることは、人口の増加割合と水の消費量が一致しないことです。人口が増えるほど、多くの水が使われます。
水の需要は多岐にわたりますが、2000年から2050年の間に製造業の工業用水が4倍、発電で1.4倍になるといわれており、合計すると全体の水需要は現在の1.5倍増加するそうです。
●水不足が人々にもたらす3つの影響
水不足が人々にもたらす影響には、以下の3つが挙げられます。
・子どもへの教育や女性の社会進出が難しくなる
・国家間の関係悪化につながる
・感染症の流行につながる
水不足は単純に「飲み水・生活用水」が足りないことだけが問題ではありません。社会的な問題や最悪の場合、紛争にまで発展するおそれが考えられます。ここではそれぞれに分けて解説します。
1.子どもへの教育や女性の社会進出が難しくなる
安全な水を確保するために「水汲み」をしなければならない環境では、子どもへの教育や女性の社会進出が低い傾向にあります。
水道がない人口割合が高い地域では、水汲みは子どもや女性の仕事とされていることが多いです。水は生活に欠かせない資源となり、1日のうちに水汲みへ費やす時間が長ければ、子どもや女性は教育・就業の機会を奪われてしまいます。
水不足を解決することによって、子どもや女性にまつわる社会問題の解消につながるでしょう。
2.国家間の関係悪化につながる
古くから水の使用権を巡る争いは絶えません。たとえば、井戸や地下水源の利用権を求める近隣部族間での争いから、ダムや大型河川の使用権をかけた国家間の紛争まで、水不足問題は人や国の関係を悪化させる大きな要因です。
さらに、人口増加により水の需要は上がり続けています。しかし、地球温暖化などで水の供給量は低下しているのが現状です。このことから、水不足に悩む地域では今後も緊張状態が続くと見られています。
水不足が問題になりやすい中東やアフリカにおいては、紛争の引き金となってきた経緯から、関係悪化が進まないように国際社会が注視しています。
3.感染症の流行につながる
「汚染水」を飲まざるを得ない環境下の子どもたちは、感染症を原因として毎日800人以上が命を落としています。その数は年間にすると30万人とされ、未来を担う子どもの命が水を原因として失われているといえるでしょう。
世界では安全な水を手に入れられない人が6億6300万人います。このような環境で生きる人の水は、動物と共有されているため池・排泄物やゴミが流れている河川などから汲んだ水を生活用水として使わざるをえません。
汚染された飲み水を使うことにより、感染症が流行する要因の一つとなっています。
●水不足対策に向けた国際的な取り組み
水不足対策に向けた国際的な取り組みには、以下の5つが挙げられます。
海水を淡水に変える
下水からきれいな水をつくる
仮想水(バーチャルウォーター)の使用を減らす
「LESS コーティング」をトイレに塗布する
AI(人工知能)で水需要を予測する
世界では水不足によって、さまざまな社会問題が発生しています。しかし、新しい技術によって水不足に歯止めをかけられるかもしれません。ここではそれぞれの取り組みを詳しく解説します。
●海水を淡水に変える
海水を淡水に変える方法は、水不足対策として注目されています。具体的には以下のような手法が取り入れられています。
・蒸発法
・電気透析法
・逆浸透法(ROフィルター)
このなかでもROフィルターを用いたる逆浸透法は、日本メーカーが世界シェアの半分以上を占めています。陸地からそのまま使用できる水の量は限られているため、海水を飲み水へ変えようとする考えから研究が進められました。
実際に沖縄では、年間1,000トンの海水が淡水に変えて利用されています。しかし、海水淡水化はメリットばかりではありません。海水を淡水にすることによって塩分濃度が上昇し、海洋生物に影響を与えるリスクがあるとされています。
●下水からきれいな水をつくる
海水を淡水化できるROフィルターは、下水処理にも取り入れられています。下水から汚れやウイルスを除去し、安全できれいな水を生み出すのは、海水を淡水化するよりも低いコストで実現可能です。
また、日本の下水処理技術は低コストで運用でき、メンテナンスも容易なため、発展途上国の水不足を解決する手段として世界から注目を集めています。
●仮想水(バーチャルウォーター)の使用を減らす
仮想水(バーチャルウォーター)とは、食糧輸入国が「もしも自国で食糧生産した場合にどれくらいの水が必要となるのか」を推計した概念です。日本の食糧自給率は約40%となり、決して高くはありません。
海外からの輸入に頼っている食糧を減らし、国内の食糧自給率を上げていくことによって、仮想水の使用を減らすことにつながります。
また、食糧自給率が上昇すると水不足だけではなく、温室効果ガス削減も期待できるといわれています。
●「LESS コーティング」をトイレに塗布する
「LESS コーティング」は、トイレに塗布することによって、水の消費量を半分に抑える技術です。LESSコーティングを取り入れることにより、先進国では水の消費を抑え、発展途上国では少量の水で衛生的な環境を整備できます。
LESSコーティングは、一度の塗布で約500回の洗浄に耐え、コーティングも5分未満で済むため、使いやすい技術として世界からの注目を集めています。
●AI(人工知能)で水需要を予測する
AI(人工知能)は、この数年で急速に成長を遂げています。ビジネス分野に限らず、エネルギー供給にも活用される機会が増えているようです。
これは水の需要予測においても導入が進められており、必要な場所へ必要量の水を供給する技術が開発されています。
使用できる水を作り出す「海水淡水化」や「下水再利用」などのインフラを整備し、AIを活用した水のコントロールが普及することによって、誰もが安全な水を使用できる社会が実現するでしょう。
●個人でもできる5つの水不足対策
個人でもできる水不足対策には、以下の5つが挙げられます。
普段の生活における水の利用方法を見直す
牛や豚などを食べる回数を減らす
良質な洋服を長く着る
汚水を流さないよう意識をする
水不足の問題について学ぶ
個人が世界に与える影響は僅かかもしれません。しかし、ほんの少し意識して水を使う人が増えれば、問題の解決へとつながります。ここではそれぞれに分けて解説しますので、見ていきましょう。
●普段の生活における水の利用方法を見直す
水は日常生活に欠かせません。その利用は多岐にわたり、料理や食器洗い、洗濯、トイレ、お風呂など、あらゆる場面で使われています。
これらの生活用水の利用を抑えることは、1人ひとりが取り組めることだといえるでしょう。たとえば、流しっぱなしを避ける、食器洗いは水をためる、節水タイプのシャワーに変えるなどできることはたくさんあります。
1人が世界へ与える影響は、ほんの僅かかもしれません。しかし、多くの人が水の利用方法を意識するようになれば、水不足問題の解決につながるでしょう。
●牛や豚などを食べる回数を減らす
牛や豚を育て、食肉にするまでには大量の水が消費されています。詳しく解説すると、とうもろこしを1kg生産するには1800Lの水が必要です。
牛や豚を育てるには、飼料となる穀物を大量に与えなければなりません。そのため、牛肉1kgを生産するには3600万Lの水を使用していることになります。つまり、牛肉や豚肉を食べる回数を減らすことによって、水の消費量を抑えることにつながります。
また、牛のゲップには大量の温室効果ガスが含まれていることがよく知られているでしょう。牛肉の消費機会を少なくすることによって、地球温暖化と水不足に対策できます。
ただ我慢するだけではなく、大豆ミートなど代替肉の開発も進められており、環境への影響だけではなく、味の良さや健康管理に役立つことから注目されています。
●良質な洋服を長く着る
ファストファッションは「低価格でおしゃれな服を着られる」と定番化しました。しかし、最近では、スローファッションが注目されています。
スローファッションとは、品質が高い衣服を大切に着ることを指しており、自分が気に入ったアイテムを長期間愛用する価値観です。とくに、サスティナブルな流行に敏感なZ世代は、スローファッションがトレンドとなっています。
すべてのアイテムをサスティナブルなものに変える必要はありませんが、1着でもこだわりを持って使い続けることは水不足の対策につながるでしょう。
●汚水を流さないよう意識をする
汚水をそのまま流さないように意識することも大切です。たとえば、シャンプーや洗濯洗剤を適量使うようにすることや、油汚れのついた食器はクッキングペーパーなどで拭ってから洗うと汚水の量を大きく減らせます。
基本的には、トイレやお風呂、台所などから下水へと排出している水を意識すると水不足対策につながるでしょう。ほかにも、お風呂の残り湯で洗濯をする、お米の研ぎ水を植物の水やりにすることも工夫の一つです。汚水の排出量を減らすことは、毎日の積み重ねが大切なことだといえます。
水不足を解決する取り組みは、海洋汚染などほかの問題を解決することにもつながりますので、意識的に取り組みましょう。
●水不足の問題について学ぶ
ここまで解説してきたように、1人ひとりが水不足の問題について正しい知識を持ち、実践することが何よりも大切です。冒頭にご紹介したとおり、人が生活するには1日あたり100Lの水を消費しています。
そのため、1人の僅かな取り組みの輪が広がれば、水の使用量を大きく削減可能です。取り組みの輪を広げるには、家族や友人同士で水不足問題に関する話をしてみてもいいかもしれません。できることから少しずつ取り組んでいきましょう。
●まとめ
世界中で水不足が起きている原因や国際的な取り組み、個人が取り組める対策などについて解説しました。水は人間が生きるうえで欠かせない資源です。1人ひとりが水を大切にする意識を持つことが問題解決につながるでしょう。
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